ブレーン・オンライン・ショップ |「部活動の意義」:吉田みどり先生(埼玉県立松山女子高等学校音楽部 顧問)吹奏楽・アンサンブル・合唱の通販サイト

× CLOSE

「部活動の意義」:吉田みどり先生(埼玉県立松山女子高等学校音楽部 顧問)

全日本合唱コンクール全国大会出場11回、9回の金賞と3回の部門最高賞を受賞した埼玉県立松山女子高校音楽部のコンクール演奏をまとめたCD「奇跡の空間」が4月2日に発売!ブックレットには、顧問:吉田先生が「部活動指導・音楽教育で大切にしてきたこと」をまとめた手記を収録。その中から、部員と必ず共有する「部活動の意義」を一部抜粋してご紹介!
2026年3月10日

 私の部活動指導は「生徒の人としての成長」が目標です。音楽に正解がないのと同じように互いの価値観を認め合い、自分と違う考えも排除せず理解に努める生徒を育てたいと考えています。また、心と体が健やかでないと本当の笑顔にはなれないので、学年関係なく全員が仲良くなれるようコミュニケーション力や協調性を身に付けるために多くの時間を割き、問題が起きれば話し合いを重ね、互いを尊重し慈しむ関係作りに努めています。

 その土台となる共通認識を作るため、年度の最初に、私の考えをまとめた『部活動の意義』を、言葉を添えて説明しながら時間をかけて全員と共有します。学年が上がるにつれ共感度が増し「去年はわかったつもりだったけど、今年は本当にわかる!」という声もきかれます。

 以下にその内容を一部抜粋してご紹介します。『部活動の意義』プリント版はこちらからダウンロードできますので、宜しければご活用ください。

部活動の意義と部員に望むもの

 部活動は「学校」という枠の中で同じ事を好きな人が集まり、ひとつの社会を作ります。これは実社会の模型のようなもので、まもなく社会人になろうとする皆さんが人間関係を作る練習をし、人と人の関わりの中で育っていく場だと思います。そこで大切なのは、気の合う者とだけではなく全員で一緒にひとつのものを作り上げるということです。

 私達は音楽部ですので、歌を通して音楽を作り上げようとしています。個人競技と違い、お互いが心の底から信頼し合い、愛情をもって支え合う間柄でなければ良いものは作れません。ですが、人と付き合っていくときには、何もかもがプラスになるというわけにはいきません。傷つけられたり、傷つけたり。自分に不利益なことを承知で言いにくいことを伝えたり、嫌だと思っても協力すべきときもあります。でも、信頼し愛し合える間柄だと、悲しみや苦しみを分かち合えたり、他人の喜びを自分のことのように嬉しく思えることもあるでしょう。

 人と接するとき私が一番に考えるのは、相手の幸せを願うことです。どうしたらこの人が心地良いだろうか、楽しく笑顔で過ごせるだろうか。時には、辛口のアドバイスや叱責も必要です。間違った行動をニコニコ見ているのは、決してその人のためにはなりません。極端に言えば「万引き」しようとする友達を止めることと、黙って見ていることのどちらが愛情ある行動でしょうか。

 部活動は異年齢の人が集まる集団ですから、先輩から教えを受けたり、後輩を育てたりというのもとても大切な勉強です。技術を磨くことも大切ですが、それ以上に人間として尊敬される存在を目指してほしいのです。先輩は後輩から尊敬される人であるよう努めること、後輩は先輩を立て、教えを素直に受け入れる気持ちを大切にしてください。ただし先輩後輩にとらわれすぎず、本音で意見交換できる部であってほしいと思います。何か問題があったときは黙って不満を持つのではなく、誰かに相談してみましょう。違う考え方に出会え、解決するかもしれません。言葉に出さずに察してほしいと思っていても、なかなか伝わらないものです。

部員にお願いしたいこと、心がけてほしいこと。

●体調管理
具合の悪い人に休むなと言うことも、もっとしっかり歌ってくれということもできません。具合が悪かったら笑顔では歌えないでしょうし…。いない人には教えることはできないので、後でもう一度同じことを教えなくてはならず時間的にもロスが出ます。
●練習の密度を上げる
練習の密度を高めるために、他パートへの注意を自分に置き換えて感じてみたり、音をとっているときは自分のパートを小さく歌ってみるとか、他パートの音も一緒にハミングなどして憶えると力がつきます。他パートの注意事項も記録しておきましょう。
●挨拶をしっかり
挨拶は、気持ちをこめてしっかり声を出しましょう。しゃべる声をしっかり出すことが歌声を良くすることに直結します。部活動内だけでなく学校内外問わずいつでも気持ちの良い笑顔の挨拶や返事ができる人であってほしいと思います。
●時間を大切に
限られた時間の中での活動です。時間を最大限有効に使うように心がけましょう。練習開始の時間や休憩時間が終わるのを自分で感じて自分が皆に声をかける気持ちでいましょう。その日の練習内容に合わせた個人練習も工夫してください。
●連絡を密に
欠席、遅刻の連絡等は必ず自分からわかりやすく(遅刻なら到着予定時刻も)伝えてほしいと思います。音楽部はペナルティを課したり、ひどく叱られる部ではないですが、周囲に迷惑をかけていることを自ら理解して自らを律してほしいと思います。欠席理由は具体的な理由を伝えましょう。訳あって言いにくい理由のときも、顧問には正直に言えてほしいと思います。
●他者への気配り、思いやりの心を常に持って。
人間関係がうまくいかず相手のことを不愉快に思う原因は、たいがい価値観の違いです。どんな出来事や発言にも複数の見方、感じ方があります。「いやだな」と思ったり「カチン」ときた時にも一呼吸おいて逆の立場で捉えると、なるほど、と思えることもあるものです。その人の言動や行動の理由を探して理解することが大切です。「その人を嫌う」のではなく、その「言動を」嫌っているのだと考えてみてください。また、部活動以外の人間関係も大切にしてください。音楽部員とだけ仲良かったり、教室での居場所が無くなったりしないようにしましょう。普段の昼食は教室でとり、土曜日などは音楽室で部員とのコミュニケーションしながら昼食をとりましょう。
●一人ひとりが自分にできることを探して取り組む
ひとつの仕事をするのは大変なことですが、それによって人は成長し、充実感も得られます。仕方なく取り組む仕事は楽しくないし、よい結果になりません。ベストを尽くしてやり遂げる努力をすることでたくさんの発見があります。
●環境を整えて
音楽室は授業と共有の場です。私物は上手に収納してください。また、掃除は率先してやってください。準備室は基本的には「先生の部屋」です。ミーティングのときや、必要なときは使って構いませんが、借りているという意識を持ちましょう。準備室への出入りは、中に人がいるかどうかに関係なく、必ずノックをして入室しましょう。
●ネット依存症にならないでください。
ネット上のトラブルが大変増えています。ネットへの書き込みは日記帳を道路に広げておくようなものです。SNSの利用はなるべくしないほうがトラブルの元になりません。LINEはもはや連絡手段として皆さんに欠かせないものかもしれませんが、事務連絡のみに使うようにしてほしいと思います。プライベートな記載や、他人を傷つける様な発言は絶対あってはなりません。大事な話や、心情を伝える場合は必ず直接会話しましょう。
●部活動は結局、何のためにあるのでしょうか。
私は人を育てるための場所だと思っています。コンクールなどで入賞することはもちろん嬉しいことです。自分の努力が周囲に認められたと感じられるからです。でもそれ以上に、人として求められる、素敵な人になってほしい」と願っています。あなたがいてくれると助かる、あなたがいてくれるとホッとする、というように。担任の先生に「音楽部のたくさんいるクラスでよかった~」といっていただけるような、そんな人になってほしいと願っています。

私自身が普段から自分に言い聞かせてきたこと。皆さんにも心がけてほしいこと。

  • ・人として素敵な人を目指したい!
  • 人のせいにしない。言い訳をしない。自分を正当化しない。
  • ・苦手な人や嫌いな人を作らない。嫌いな物事を作らず、何でも工夫して楽しんで取り組む。
  • ・何かあっても、「人間は間違う生き物だから」と人を許す。
  • ・嘘をつかない。常に誰に対しても誠実であろうとする。
  • ・騙されていると知ってしまっても騙され続ける人で良いが、自分は決して他人を騙さない。
  • ・何に対しても全力投球、一生懸命取り組む。押し付けられた仕事であっても。
  • 苦労した人が一番の感動をする。だから、積極的に苦労を引き受けよう。
  • ・周囲に目を配り、一人でいる人を作らない気配りを常にしよう。
  • ・自分を「人見知り」と命名して逃げずに、自分から積極的に他人と関わろう。
  • ・毎日うわべでなく、心からの笑顔でいられる「心」を持とう。
  • ・挨拶は大きな声で、笑顔ではっきりと。人の話は必ず顔を見ながらうなずきながら聴こう。
  • 自分で自分が好きになれる行動をとろう。

人間は完全な生き物ではない。むしろ弱くて不完全でダメな生き物なのだから、 ダメであたり前。だからこそ、がんばる姿は美しいのだと思います。

◆吉田みどり

埼玉大学教育学部音楽専攻課程卒。作曲を土肥 泰、声楽を金子ツネ子、青山恵子、指揮法を櫻井將喜、秋山和喜の各氏に師事。高校時代の田尻明規先生との出会いが音楽教育を志すきっかけとなる。埼玉県立岩槻高等学校、埼玉県立日高高等学校、埼玉県立坂戸西高等学校を歴任し、2011年 (平成23年) 度より埼玉県立松山女子高等学校に着任。音楽部を率いて全国大会に11回出場し、9回の金賞、3回の文部科学大臣賞受賞へと導く。また、埼玉県立浦和第一女子高等学校OG合唱団として発足した合唱団『クール・ヴァン・ヴェール』を、2018年 (平成30年) の「春こん。」合唱祭、コンクール埼玉県大会より恩師の田尻明規先生から引き継ぎ、指導に当たっている。

チェックしたアイテム

カテゴリーからさがす