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連載:アンサンブルの作り方 - 広瀬勇人

アンサンブルの作り方:広瀬勇人 第3回「楽曲の理解」

こんにちは。作曲家の広瀬勇人です。

今回は、練習に入る際の「曲のアナリーゼ(分析)」について詳しく見てみましょう。

2018年9月28日
 

 編成と曲が決まり、楽譜が手元に届きました。「さあ練習するぞ」と意気込むところなのですが、楽譜が届いたら、個人練習や合わせに入る前に、まずはメンバー全員が集まって、スコアを見ながら一緒に曲全体の音源を聞いて、"楽曲を理解すること"から始めるのを強くおススメします。

練習に入る前に楽曲を理解することの重要性

選曲の際に一度はその曲の音源を聴いている事が多いと思うのですが、ただ音源を聴くだけだと自分のパートやメロディを中心に聴いてしまいがちで、曲の聴き方に「偏りやムラ」が生じやすくなってしまいます。

曲を選ぶ段階ではそれでも良いのですが、実際に自分たちがその曲を練習・演奏していく段階となると、これらの偏りやムラが弊害となって、様々な形で演奏を崩す要因となってしまいます(音量的にあまり出なくて良い所で出過ぎてしまう、主旋律を演奏する際に伴奏パートに神経が行かず縦が揃わない、など)。


一度ついてしまった「耳のクセ」は、そのまま練習すればする程、良くない方向に演奏が定着してしまう恐れがあり(後日顧問やコーチの先生に自分たちの演奏を聴いて頂いた際、助言を頂いてその場では「正しい方向」に修正されても、1週間位するとまた自分たちの耳慣れた演奏に戻ってしまう、という事はよくあると思います)、以下の様な方法であらかじめ曲を大まかに把握して、メンバーそれぞれがある程度「正しい方向」の共通認識を確認してから練習に入ると、後々の演奏の伸びしろが広がっていくでしょう。

役割を整理する

「練習に入る前に曲をアナリーゼ(分析)しなければいけない」となると、何だか気が重くなってしまう生徒も多いと思うのですが、「これから演奏する曲がどんな風に出来ているのか、みんなで一緒に見てみよう」くらいの軽い気持ちで、楽しい共同作業の1つとして捉えられると良いと思います。


スコアを見ながら一度全体を通して聴いてみたら、2回目からは時々音源を止めて、ここの部分は○○が主旋律、△△がハーモニー、という風に意見を出し合って、スコアとそれぞれのパート譜にどんどんメモ書きをしてゆくと良いでしょう。

① メロディのパートとそれ以外の伴奏パートを整理する

最も簡単で効果的なアナリーゼは「メロディとそれ以外のパートを整理する」ということです。 音楽の中で最も聴こえて欲しいのは「メロディ」なので、スコアに、それぞれの場面でメロディを担当しているパートに何か印をつけて、パート譜でも自分がメロディの所に印をつけておくだけで、メリハリの利いた良い演奏への第一歩を踏み出すことが出来ると思います。

ただ実際の曲では、異なるメロディが2つ同時に演奏されたり、メロディ以外の楽器が全部同じ扱いだと違和感がある、ということも出てくると思うので、出来ればもう一歩踏み込んで、以下の様にアナリーゼ出来ると良いでしょう。

② メロディの種類、伴奏の種類などを整理する

「メロディ」の中にも3種類の旋律があり、「伴奏」の中にも「ハーモニー」2種類と「リズム」があります。詳しくは、以下の様に整理出来ると思います。

メロディ
・主旋律:曲の中で最も聴こえて欲しい旋律
・対旋律:主旋律と同時に演奏される二次的な旋律
・合いの手:主旋律のフレーズの切れ目などで演奏される二次的な旋律

ハーモニー
・バス:和音の中で最も低い音
・バス以外のハーモニー:バス以外の和音の音(主旋律のハモリも含む)

リズム


ここまで来るとやや難しいと感じる生徒も出てくると思うので、メンバーの学年や気質、経験に応じて、上記①の様にひとまずメロディの移り変わりだけをアナリーゼして曲の練習に入り、進み具合を見ながら改めて②を調べるというケースがあっても良いと思います。逆に、ある程度楽器経験のある高校生のグループや、リーダー的な存在のメンバーがいるグループでは①を飛ばして②のアナリーゼから始めると良いでしょう。


こういった音楽上の役割を調べていくと、曲がだんだん立体的に見えてくるので、このアナリーゼを良い演奏に活かすため、次に音量の設定を考えます。

役割ごとに音量を設定する

主旋律、ハーモニーなどの役割によって、音量の優先順位を以下の様につけると良いでしょう。

メロディ伴奏
主旋律
対旋律
合いの手
バス
バス以外のハーモニー
リズム

例えば、楽譜上すべてのパートに「mf」で書かれてある場面では、主旋律は少し大きめの「mf」、対旋律はいわゆる「mf」、バスはやや小さめの「mf」、バス以外のハーモニーやリズムは「mp」(雰囲気はmf)、などといった形で普段から練習しておくと、音楽の骨格や陰影がはっきりした演奏が定着して、演奏に深みと説得力が増すでしょう(やり過ぎは逆効果ですが)。

今回のポイント!

●個人練習・合わせに入る前に、一度皆でスコアを見ながら音源を聴いてみる
●音源を聴きながら、役割を整理する(場面ごとにそれぞれのパートの役割を把握する)
●役割ごとに音量を設定する(音楽の骨格・陰影を意識する)


このように、音源を聴きながら意見を出し合って役割を確定し、スコア・パート譜にそれらを書き込んでから練習に入ると、 普段から役割に沿った音量で個人練習・合わせを行う、ということができます。


次回第4回は「演奏の整理」と題して、実際にアンサンブルの合わせを行う際のポイントなどを見てみましょう。

(広瀬勇人)

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