ガリバー旅行記／ベルト・アッペルモント【吹奏楽輸入楽譜】

この作品は、ジョナサン・スウィフトの著書『ガリヴァー旅行記』（1726年）から着想を得て作曲されました。もっとも、物語をそのまま音楽で描写したものではありませんが、原作に登場するいくつかの要素が音楽の中に巧みに取り入れられています。
物語の主人公である船医ガリヴァーは、4つの架空の国を訪れます。それぞれの国には独自の住人と文化があり、この組曲の4つの楽章にもそれぞれの国の名がつけられています。
最初の楽章 「リリパット」 では、活発で行動的なリリパットの小人たちが、陽気で親しみやすいテーマによって描かれます。
音楽は軽快で遊び心にあふれ、小さな人々の世界が生き生きと表現されています。
続く 「ブロブディンナグ」 は、ガリヴァーが巨大な巨人たちに捕らえられる場面を表しています。重低音の楽器によって、巨人たちが近づいてくる様子が感じられます。
同じ主題が何度も繰り返され、次第にテンポが速くなることで緊張感が高まっていきます。
第3楽章 「ラピュータ」 は、空に浮かぶ島を描いた部分で、頭を傾けた奇妙な人々が住む不思議な世界です。
夢のようで幻想的な雰囲気が音楽全体に漂い、浮遊感のある独特の響きが印象的です。
最後の楽章 「フウイヌム国」 では、知的で高貴な馬たちが、野蛮で未開の人間（ヤフー）を支配する世界が描かれます。
冒頭の輝かしいトランペットは、馬たちの力強い駆け足を表し、その後に続くホルンやトロンボーンの堂々とした主題は、原始的なヤフーの姿を象徴しています。作品は壮大なフィナーレで締めくくられます。
作曲者はこの『ガリヴァー旅行記』の音楽化にあたって、演奏の難易度をあえて抑えています。しかしながら、色彩豊かなオーケストレーション（必要に応じてキューも用意されている）と、わかりやすく魅力的な主題、そして名作文学をもとにした豊かな想像力によって、多くの吹奏楽団にとって親しみやすく、演奏しがいのある作品となっています。