若い人たちに大切なものが受け継がれていくことを願って
CD《オール・芸大》収録作品について、長生淳さんにお話を伺いました。
自分が学生だったのはかれこれ四昔も前のこと。
隔世の感があるのも当然で、藝大生と一括りにするのは申し訳ないくらいに思っています。いまの若いひとたちがスゴいというのは、藝大や音楽の世界にかぎらないようですし、それがむしろ世の当然なのかもしれませんね。先輩たちが苦労して乗り越えたような壁もやすやすとこなし、それらは目標とかではなく出発点にすぎない……といったことはこの録音でもしみじみ感じさせられるのですが、なんと精緻な演奏でしょう。なんと明晰に曲の姿を伝えることでしょう。それだけでも十分に賞賛に値しますが、加えてなんとまあ血の通った暖かな演奏なことか。この両立はさすがにたやすいことではないでしょう。
もちろん、そこは大井マエストロの多大なお力添えがあったであろうことは想像に難くない。拙作に関して言えば、書かれたの自体は学生さんたちが生まれてからになりますが、そのまま同時代の音楽として肌身に感じられるものだとは思いません。一昔ぶんほど若い大井さんが丁寧に音符のむこうがわをときほぐしてさらに若い世代に伝えてくださればこそ、と深く感謝申し上げますとともに、そうやって世代をこえて繋がれる機会をいただけたことも嬉しくありがたく思っております。
この学生さんたちの中には、先々出身大学の枠にとらわれないくらい大活躍する人も少なくないでしょう。でもこうやって受け継いだ大切なものを後輩たちに伝えていく、なんてことがあればと願っています。
長生 淳
指揮:大井剛史
発売日:2025年5月16日
販売価格:2,750円(税込)
《収録作品》
- 明日に向かって / 岩井直溥
- 嗚呼! / 兼田 敏
- Lamentation To ― ~Theme & Variations~ / 保科 洋
- 秘儀 Ⅳ〈行進〉 / 西村 朗
- ピース、ピースと鳥たちは歌う / 伊藤康英
- アスキリヤヴェ~ありしものへ / 長生 淳
- 葵上 / 田村文生