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「音楽教師、最後の10年」 元・埼玉県立川越高校音楽部ー吉田寛先生

「音楽教師、最後の10年」:吉田 寛 先生 第5回 3年目『手ごたえ』

ヴォイストレーナーの協力や、自身の学びの深まりに、少しずつ指導の道筋が見えてきた3年目。響きも変わり、手ごたえを感じ始めていた―

 

 3年目(2007年)。この年からヴォイストレーナーとして約10 ヶ月間、佐々木先生の指導を受けることになった。(その後佐々木先生は星野高校の指揮者となり、ご活躍中。)
 生徒が受けるレッスンを見ながら、自分の中に納得出来る発声のイメージが少しずつ形となっていった。また、高校音楽教育研究会(高音研)の講演に講師として来ていただいた医学博士の米山文明先生に呼吸や発声の話を伺い、さらに先生のDVDも見た。それにより呼吸や発声についてさらに理解が深まり、自分なりの腹式呼吸や発声法を見つける「手掛かり」が、ようやく見えてきた。


 こう書いてしまうとすぐにわかったように感じてしまうかもしれないが、そうではなくこれ以降、長い時間をかけて徐々に納得していったものである。音楽準備室に一人でいるときに、色々な声を出し、のどの状態、息の流れ、方向などを確かめながら、生徒に伝えるにはどのようにしたら良いかを探り、少しずつ掴んでいったものなのである。とはいえ「発声とはこうだ」と自信を持って言える程の状態ではなかった。


 この年は、新入部員がたくさん入ってきた。その中に私の息子もいた。父親が顧問をしている部によくぞ入ってくれた。息子がどう思っていたかはわからないが、私は思ったほどやりづらくはなかったと記憶している。
 そしてこの新入部員達の中には、ピアノが弾ける子が5人くらいいた。私が赴任したときの2年生と1年生にはピアノが弾ける子は一人もいなかった。他の学校の先生から「川越高校の生徒達はみんなピアノとか弾けるんでしょう?」といわれ、周りに思われている状況と現実は全然違うのにと思ったものである。ピアノは弾けないのにパートリーダーに選ばれた生徒は、スラスラとは弾けないながらも、ピアノを使って音取りの練習をよくやっている。音楽部の生徒たちは、常に努力し責任を果たそうと頑張るのだ。


 1年生の時のSVECで悔しい思いをした学年も3年生になり、重ねてきた努力が実を結び確実に上達してきた。またヴォイストレーニングも受け、前年度より全体のレベルが上がったと感じていた。響き自体が昨年より良いとも感じていた。関東大会銀賞だった昨年を超えたい、超えられるかもしれない―


 しかし、コンクールの結果は県大会銀賞(銀賞の2番目)。閉会式後、コンクール会場の裏手で部員達が泣きながら課題曲の「虹」を歌った事を鮮明に覚えている。悔しかった。SVECでは2団体とも金賞をいただくことができた(10年間でたった一度の快挙だ)。



 思うような結果は伴わなかったが、少しずつ手ごたえを感じ始めていた。

元・埼玉県立川越高校音楽部ー吉田寛先生

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