『女声合唱版初演プロジェクト・リレーコラム』第3回:話すように、語るように/石橋遼太郎
指揮者の石橋遼太郎です。
今回『太陽と海と季節が』女声合唱版の初演ということで作曲の森山至貴さん・そしてブレーン株式会社とこうしてタッグを組めることを嬉しく思います。
森山さんからバトンタッチした初回ということで、合唱を創るうえで大切にしていることを気ままに書いてみようと思います。
合唱を創ることは、人間が持つ「ただの声」を「伝わる言葉」に変換することだと思っています。
世の中にはいろんなタイプの話し方(言葉遣い)があります。
- 輪の中のリーダー的存在で、とても声が大きく、威圧的な言葉遣いで中心に立つタイプ
- とにかく人を笑わせるのが好きで、次から次へと面白い言葉を話すタイプ
- 口数は少ないが、時たま見せるセンスある間の使い方とワードチョイスで実は一目置かれているタイプ
様々な話し方があるその中で、この人の話は聞きたい、心に残る、あるいは聞こうとしなくても耳に入ってしまう!という話し方ってあると思います。
ずーっと小声で話していても相手には聞こえない。ひたすら大きい声で話しても耳を塞がれてしまう。感情のない棒読みでは飽きられてしまう。大切な単語だけを過度に強調するのも不自然です(もちろん、いきなり大きい声を出してびっくりさせたり、急に言葉遣いを変えて聴き手を裏切る場面もあります。これも言葉を伝える手段として大切です)。自然な言葉遣いでも「間」がないと疲れてしまう。
音楽もまさに同じではないかと思っています。特に「歌」は、「言葉を直接操ることのできる」音楽です。「歌」において、伝わる言葉遣いができるということは、とても重要なことです。
聴く側は今、言葉をどう受け取ってくれているだろうか。詩人や作曲家の伝えたかったことを、じぶんたちの言葉を通して正しく伝えられているだろうか。あるいは、それらの表面をなぞっただけの、ただの伝言ゲームのような言葉になっていないだろうか…
今回初演をする「女声合唱団ぱるらんど」の団名はまさに「話すように、語るように」という意味です。団名に恥じないよう、ここまで書いてきたようなことをとにかく大切に、大切に活動してきました。とても素直で優しい言葉遣いで歌うメンバーが多く「太陽と海と季節が」の世界観にとてもマッチしているように思います。
森山さんから楽譜が届いたとき、楽譜という台本に広がる世界を、わたしたちの言葉でどのように伝えられるだろうかとワクワクしました。
素晴らしい作品です。ぜひ楽しみにしていただければと思います!

女声合唱団ぱるらんどの皆さん
次回は2月下旬公開予定!お楽しみに。