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「音楽教師、最後の10年」 元・埼玉県立川越高校音楽部ー吉田寛先生

「音楽教師、最後の10年」:吉田 寛 先生 第3回 1年目『ゼロからの試行錯誤、はじまる』

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ついに始まった川越高校での1年目。「自分には何も出来ない」と話す先生に、生徒からは驚くべき反応が返ってきた―

 

 初めての授業は3年生の授業であった。音楽準備室で生徒が来るのを待っていた。高校生の男子生徒というものはガヤガヤと騒ぎながらやってくるのが当たり前だと思っていたが、静かである。「まだ来ていないのかな?」と思いつつも、授業開始のチャイムが鳴ったので恐る恐る音楽室をのぞくと40人以上の生徒が整然と静かに座っていたのだ。初めから驚かされてしまった。
 「予想通りだ。とてもかなわない。出来ない自分をさらけ出そう。見栄を張ってもすぐばれる。」
 素直に、自分に出来ることはこういう内容で、とても前任者のようには出来ないこと、ピアノも下手であることなども話した。驚くべき反応が返ってきた。「先生は、前任者と同じ事をしようと思わなくてもよいと思います。先生が出来ることを精一杯やってくださればよいです。」と。救われた。こんな言葉を言える生徒がいるのかと驚いた。頑張ってみようという気持ちが湧いてきた。


 音楽部との初めての出会いは、春休みであった。コンクール曲を練習していた。英語でもない、全く知らない言葉の曲だった。ハーモニーも込み入っているし、テンポも速い。「なんなんだこの曲は。これを私が指導するの? 指揮するの? 何にもわからないのにどうしよう・・・」

 それでも部員たちは、何もわからない私を受け入れてくれた。いろいろと思うところはあったはずだが、顧問として、指揮者として扱ってくれた。そういう指導を受けていたのだろう。とてもありがたかった。


 川越高校の音楽部は、生徒が主体の部活動である。生徒が主体は当たり前ではあるが、色々な行事の提出物や練習計画等もすべて生徒が行っており、私は言われたことをやるだけだった。名前を書いて印鑑を押す。言われた額を銀行で下ろしてくる。といった具合である。外部の組織との交渉まで生徒が行うことにびっくりした。例えば定期演奏会なら、予約から支払いまで一切生徒が行い、私は曲の指揮をするだけでよかったのだ。


 そうして始まった1年目、私は生徒と一緒に体操や呼吸、発声を毎日のようにやった(生徒は伝統的に引き継がれている体操や呼吸法、発声を毎日行っていた)。やりながら「これは何のための練習? どこに気をつけるべきなの?」と生徒に疑問をなげかけながらやっていった。指導者講習会にはなるべく出るようにし、私にしては頑張って勉強したように思う。

 

当時のメモがある。
【わからないこと】
その1,腹式呼吸の理屈。
その2,良い発声とは。
その3,合唱では楽譜通りでない表現もOKなの?

 

 初めてのコンクールには33人でBの部に参加することになった。県大会では銀賞の一番下であった。少なくとも3年生は大きな声で歌えていると思っていたが、客席で聴くとカーテンの向こう側で歌っているようだと言われてしまった。3年生引退後のSVEC(埼玉県ヴォーカルアンサンブルコンテスト)には2年生6人のチーム《花火》(うち一人は留学生のアメリカ人)と、1年生14人のチーム《エリモ岬》で参加した。《花火》はなんとか銅賞に入ったが、《エリモ岬》は入賞できなかった。ピッチがどんどん下がり、ズレが生じ、何のハーモニーなのかわからなくなる。時々持ち直しきれいに響くこともあるが、決めたいハーモニーもはまらない。


 指揮をしていて、音程のことは器楽と同じだからすぐにわかる。表現についてもこうして欲しいと言うことはできる。歌って聞かせる事もする。だが、その通りにならないのである。直してやりたくても、直せない(そのときはわからなかったが、一番の理由は発声だったのだと思う。音程がとれる発声、表現できる発声ではなかったのだ)。自分の実力のなさをあらためて突き付けられる日々だった。これからどうしたら良いのだろう。

元・埼玉県立川越高校音楽部ー吉田寛先生

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